同次二次関数がなす集合の凸性

定理
$f, g: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}$が同次二次関数であると仮定する。このとき、集合$\mathcal{M} = \lbrace (f(x), g(x)) : x \in \mathbb{R}^n \rbrace \subset \mathbb{R}^2$は凸である。

方針
凸性の定義を直接確認して証明する。 凸性の証明にあたり、凸結合となる定数の存在を示している。

証明
二点$u = (u_f, u_g)$、$v = (v_f, v_g)$を取る。

  1. これらの二点と原点が同一直線上にあるとする。

    $u$と$v$の間の線分は凸であるとともに、関数の同時性より$\mathcal{M}$に属する。
    (線分上の点は適当な係数$\alpha$を用いて$\alpha(f(x), g(x))$となる。同次性より、その次数を$n(= 2)$として、$(f(\alpha^{1/n}x), g(\alpha^{1/n}x)) \subset \mathcal{M}$となる。)

  2. これらの二点と原点が同一直線上にないとする。

    これらの点が$\mathcal{M}$に属するので、次のような点$x_u, x_v \in \mathbb{R}^n$が存在する。


\begin{align}
&u_f = f(x_u), &u_g = g(x_u), \notag \\
&v_f = f(x_v), &v_g = g(x_v). \notag
\end{align}

証明の準備:証明すべきことの整理)
更に一般性を失うことなく次を仮定できる。


\begin{align}
v_f u_g - u_f v_g = d^2 > 0. \notag
\end{align}

($d=0$の時は$u,v$が同一直線上のとき。$(LHS) < 0$の時もあるが、順番を入れ替えることで正にできる。)

凸性の証明にあたり、定数$\lambda \in (0, 1)$に対して次の$x_\lambda \in \mathbb{R}^n$が存在することを示す。


\begin{align}
(f(x_\lambda), g(x_\lambda)) = (1 - \lambda)u + \lambda v. \notag
\end{align}

$\rho$および$\theta$は実数変数として、$x_\lambda$を次の形で求める。($x_u, x_v$のspanを上手く表現)


\begin{align}
x_\lambda = \rho (x_u \cos \theta + x_v \sin \theta).  \notag
\end{align}

この$x_\lambda$を代入して以下が得られる。


\begin{align}
& \quad \rho^2 f(x_u \cos \theta + x_v \sin \theta) = (1 - \lambda)u_f + \lambda v_f, \notag \\
& \quad \rho^2 g(x_u \cos \theta + x_v \sin \theta) = (1 - \lambda)u_g + \lambda v_g. \notag
\end{align}

これらの方程式から$\rho^{2}$を消去し、$\lambda$を$\theta$の関数として表現すると以下のようになる。


\begin{align}
\lambda(\theta) = \frac{u_g f(x_u \cos \theta + x_v \sin \theta) - u_f g(x_u \cos \theta + x_v \sin \theta)}{(u_g - v_g) f(x_u \cos \theta + x_v \sin \theta) - (u_f - v_f) g(x_u \cos \theta + x_v \sin \theta)}. \notag
\end{align}

$0 \le \lambda(\theta) \le 1$であり、対応する$\theta$が存在することを証明すればよい。

証明のために導入した変数の上下限を決定

$\lambda(\theta)$の分母は、$f,g$が同次二次関数であることから$\cos \theta$および$\sin \theta$の二次関数である。
よって$T(\theta) = \alpha \cos^{2} \theta + \beta \sin^{2} \theta + 2 \gamma \cos \theta \sin \theta$と記述できる。
$T(0) = \alpha, T(\frac{\pi}{2}) = \beta$である一方、実際に計算して、


\begin{align}
T(0) 
&= \big(g(x_u) - g(x_v) \big) f(x_u) -  \big(f(x_u) - f(x_v) \big) g(x_u)  \notag  \\
&=f(x_v)g(x_u) - g(x_v)f(x_u) = d^{2}  \notag \\ 

T(\pm \frac{\pi}{2}) 
&= \big(g(x_u) - g(x_v) \big) f(x_v) -  \big(f(x_u) - f(x_v) \big) g(x_v) \notag  \\
& =f(x_v)g(x_u) - g(x_v)f(x_u) = d^{2} \notag  \\
\end{align}

となることから、$\alpha = \beta = d^{2} > 0$となる。
- $\gamma \geq 0$の場合
$\theta \in [0, \pi/2]$の場合は、$T(\theta) > 0$
- $\gamma \leq 0$の場合
$\theta \in [-\pi/2, 0]$の場合は、$T(\theta) > 0$ となる。

そのため、$\gamma$の符号に依らず同様の議論ができるため、$\gamma \geq 0$とする。

ここで、


\begin{align}   \lambda(0) 
&= \frac{g(x_u)f(x_u) - f(x_u)g(x_u)}{\big(g(x_u) - g(x_v)\big)f(x_u) - \big( f(x_u) - f(x_v) \big) g(x_u)} \notag \\
&= \frac{0}{f(x_v)g(x_u) - f(x_u)g(x_v)} = 0  \notag \\
    
\lambda(\frac{\pi}{2}) 
&= \frac{g(x_u)f(x_v) - f(x_u)g(x_v)}{\big(g(x_u) - g(x_v)\big)f(x_v) - \big( f(x_u) - f(x_v) \big) g(x_v)} \notag \\
&= \frac{g(x_u)f(x_v) - f(x_u)g(x_v)}{g(x_u)f(x_v) - f(x_u)g(x_v)} = 1  \notag
    
\end{align}

(導入した変数の連続性を用いて、凸結合の存在を主張)

また、$\theta \in [0, \pi/2]$において$\cos \theta, \sin \theta$は連続で$f, g$は同次二次関数より連続であるから$\lambda(\theta)$も連続となる。よって、$0 = \lambda(0) \le \lambda(\theta) \le \lambda(\frac{\pi}{2}) = 1$となるような$\theta$が存在する。$x_\lambda$を構成する$\rho$は、$\rho^{2} f(x_u \cos \theta + x_v \sin \theta) = (1 - \lambda)u_f + \lambda v_f$により求めることができるため、凸結合の存在が示され、題意は示された。

参考文献

  • 元論文

        1. Dines, On the mapping of quadratic forms, Bull. Amer. Math. Soc., 47 (1941), pp. 494– 498.
  • 定理、証明の引用先

    • Pólik, Imre, and Tamás Terlaky. "A survey of the S-lemma." SIAM review 49.3 (2007): 371-418.